遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「ん。じゃあ、風呂に入って、とりあえず身体を温めよう。何か食べられそうならスープくらいは用意するけど」
「千智さん……」
「ん?」

 亜由美が名前を呼ぶと、鷹條が優しく顔を覗き込む。側にいるからと確認させるかのようだった。

「甘えてもいい?」
「恋人だから当然だよ。亜由美が甘えてくれたら俺は嬉しい」
 鷹條は亜由美をぎゅっとハグしてその温かさを伝えてくれる。

「風呂、一緒に入ろうか?」
 耳元で囁く鷹條にこくっと亜由美は頷いた。

 もう亜由美のマンションの仕様を理解している鷹條がお風呂をいれてくれて、二人は一緒に湯船に浸かった。

 きちんと入浴剤まで入っている。亜由美の好きなローズの香りだ。
 湯船の中で亜由美は後ろから抱きしめてくれている鷹條にもたれかかっていた。

「なんか……甘えっぱなしみたい」
「それでいいんだ。だいたい亜由美は今までだって一人で頑張りすぎなんだから、俺に甘えるくらいでちょうどいい」

「そうかな?」
「そうだ。本当に亜由美がいろいろ頑張ってくれたからあいつを逮捕できた。感謝するのはこっちだよ。怖い思いをさせてごめん」

「……っ! そんなの、千智さんがいてくれたから」
「あいつは今頃いろんな罪状を並べられて、絞られているんじゃないかなあ」
 鷹條の言葉に亜由美は首を傾げる。
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