遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 よくよく考えてみたら、最初に出逢った時から『すごく飲みそう』とかは亜由美の外見で判断していたのだと思うし、『女の子はみんな好きだよね』という発言も女性を一括りにしているからの発言とも考えられる。

 それに加えて『亜由美だけではない』という言葉もだ。

 なんとなく察してはいた。色んなことに違和感はあったけど、目を瞑っていた。

 確かに恋愛に夢見てたけれど、こんなふうに現実を突きつけることはないんじゃないか。

 神様はいじわるだ。
 家に帰ったらなんだか無性に悲しくなって泣けてきてしまった。

 確かに見る目がなかったと言われればそれまでだけれど、こんな目に合わなくてもよかったんじゃないのかと思えて涙が我慢できなかったのだ。

 その日はわんわん泣いた。
 やけ酒できないところが下戸のつらいところだ。

(ついてない……)
 自分への誹謗中傷を目の当たりにするというショックを引きずりつつ、亜由美はビルの窓から外を見る。

 駅からワンブロック歩いたところにある姫宮商事は、高層ビルを自社ビルとしている準大手の総合商社である。

 そのリフレッシュルームに向かう大きな窓を備えたビルの廊下からは、駅周辺のビル群が綺麗に見えてなかなかの景観なのだった。

 
 亜由美は窓の外に目をやる。窓から見える景色は綺麗なのに亜由美の心は晴れない。
 ──融通効かないってダメなことなの?

< 16 / 216 >

この作品をシェア

pagetop