遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「あいつ、俺の正体を知らずに俺も脅しただろう?」
「写真のこと?」

「そう。よりにもよって俺をストーカーした、と。その時点で俺は被害者になって、警察官が被害者ということになったわけだな。だからあいつは治安維持に歯向かったとして組織対応されてた」

 道理でいろいろ対応が早かったはずだと亜由美も納得だ。

「それで調べたら他にも余罪があった」
「あ! 詐欺?」
「よく知ってるな。まさか、被害にはあっていないだろうな?」

 亜由美は首を横に振る。
「ううん。ただ、一緒にいた時に変なことを言っていたから。事業をやるといってお金を借りて返さなかったとか言ってたわ」

 亜由美が被害にあっていなかったと聞いて、安心したようすの鷹條だった。
「そうだ。だから二課でも手配されていて……あ、捜査二課は詐欺とかの取締りを担当してるんだよ。今回は二課と合同捜査だったんだ。あいにくと俺はその捜査には入れてもらえなかったけど」

 亜由美が思っていたよりも警察内部では大掛かりに動いていたことだったのかもしれない。

 しかしそれにしても、入れてもらえなかったと拗ねている鷹條は普段の鋭さはなりを(ひそ)めてなんだか可愛らしい。

「入れてもらえなかったの?」
 こくりと鷹條は頷く。
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