遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「照れたの?」
 亜由美にからかわれて、口元を引き結んだ鷹條は亜由美の頬を指で軽くつつく。

「全く、甘えてもいいと言ったのは俺だからな。ただ、こんなに可愛いのは本当に困る。風呂から上がったらおしおきだ」

「おしおき?」
 頑張ったのに、おしおきは納得いかない亜由美は首を傾げる。

「甘えていいとは言ったが、からかっていいとは言ってない」
「そ、そんなのズルいっ!」

「おいで、亜由美。甘えろよ」
 湯船を上がった鷹條は、脱衣場で亜由美に向かってバスタオルを広げた。

 口ではおしおきなんて言っていても、その表情は甘くて、さらに熱情まで含んでいて、亜由美が戸惑ってしまうほど色香たっぷりだったのだ。

「ホントにズルい……」
 亜由美の小さな声は鷹條までは届かなかったようだ。亜由美はバスタオルの中に素直に飛び込むことにした。

 バスタオルに包んで、バスローブに包んでしまった鷹條はベッドに亜由美を連れ込んで、優しく抱きしめてくれる。

 大好きな人の温もりと好きな香りに包まれて、亜由美は大きく息をついた。

 鷹條はただ抱きしめてくれて、髪を撫でたり、軽くつむじにキスをしたりとひたすらに亜由美を甘やかす。

 鷹條の全身で抱かれることは嬉しいけれど、なにもしなくていいのかなと亜由美は疑問に思った。
「なにも、しなくていいの?」
< 162 / 216 >

この作品をシェア

pagetop