遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「ああ。その許可が降りて……というか、割と積極的に降ろしてくれた。今回の論功行賞的なものもあるかもな。亜由美にも感謝していると思う」
「私はすぐにでも有休は取れる……」
 二人で思わず顔を見合わせてしまう。

「え、どうしよう、すっごく幸せ」
「そんなに遠くには行けないんだがいいか?」
「うん! もちろんだよ。旅行に行けるだけで嬉しい!」
「計画を立てよう」

 鷹條がそう言うのに亜由美は笑顔で頷いた。
 二人でスマートフォンを覗きながら近隣の旅行スポットを探す。

「ゆっくり、とかいうとやっぱり温泉とかだろうか?」
「温泉行きたい」

 鷹條が宿泊サイトのホームページを開いてくれる。画像付きの案内を見ながら、二人で計画を立てるのはとても楽しくて幸せだった。

「遠くにはいけない分、少し贅沢な宿にしよう」
「露天風呂付き客室とか?」
「ああ、それいいな」

 露天風呂付き客室なんて嬉しすぎる!
 端正な顔立ちの鷹條のことだ。浴衣もとても似合うだろう。

 想像すると亜由美はぼうっとしてしまう。
「温泉、すごくいいかも……」
「帰りにうちの実家に寄っていいか?」
「うん」

 気軽に返事をして亜由美は、ん? となる。
「実家? 千智さんのご実家!?」

「そう。亜由美を両親に紹介したくて」
「そ……そうだよね」
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