遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「うん。まさか自分が警備局に配属されるなんて思っていなかったし。父親は喜んでるけどな」
「エリートだから?」

 亜由美がそう尋ねると鷹條は微妙な顔をする。
「うーん、まぁ、確かに希望すれば誰でもなれるというものではないが、エリートかと聞かれるとそうだとは言えない。警察だとエリートって言うとやはりキャリアを指すから」

 民間の会社なら基本的には新卒から一律でスタートする。もちろん学閥などは依然ないとも言えないが、表向きはないことになっている。

 けれど、公務員はそういうものではないらしいというのは聞いたことはあった。

 キャリアと呼ばれる人達は、難関の国家公務員試験に合格するのみでなく、その後も警察官として採用されなくてはいけない。年に十数人しか採用はなく、とても狭き門なのだ。
 もちろんスタートラインも全く違う。

「うちは三代目だからな」
「三代目?」
「祖父も、父親も俺も警察官だから」
「え? そうなの!?」

 そう言えば、鷹條からあまり家族の話を聞いたことはなかったかもしれない。

「うん。うちは母親が保育士だから、両親とも公務員ってことになるな。兄がいるが、兄も公務員だ」
「お、お兄さん?」

 鷹條に兄がいたことも初めて聞いた。
 家族全員公務員というのにも驚く。

「地方だと結構あると思う」
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