遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 外観は完全に和風だけれど、内装は部屋の奥がガラス張りになっていて、露天風呂のあるデッキが見える。
 お風呂はしっかり湯船が見えるわけではないから、部屋の中からお風呂に入っているのは見えない造りだ。

 デッキにはラタンの椅子が置いてあり、デッキでもゆっくり外の景色を楽しめるようだ。

 部屋の中は入るとシンプルなデザインのソファが置いてあって、横の畳の部屋にはベッドが置いてある。完全に和洋折衷の部屋だった。

 亜由美は言葉が出ない。
「すごく素敵……」
「喜んでくれてよかったよ」

 とても自然に後ろから抱きしめられる。鷹條は亜由美を抱きしめたまま耳元で囁きかける。

「最初は華やかで綺麗な人だなって印象だった。それから、泣きそうな顔を見て、しっかりした人だけどきっとたくさん我慢しているんだろうなって分かって、そのギャップがいいなって思った」

 出会った時の頃のことだろう。
 そんな風に思われていたなんて亜由美は知らなかった。

 その頃の亜由美は誰かに何かを頼ることも苦手で、鷹條のことを素敵だと思っていても手の届く人だと思えなかった。
 低い鷹條の声が耳元に響く。
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