遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「だって可愛いから。普段ちょっと澄まして見えるくらいの美人なのに、俺には蕩けた甘い顔を見せるから、つい独占欲を刺激されるよ」

 くすっと笑った鷹條は亜由美の鎖骨の下辺りに唇をつける。
「あ……」
 軽く吸われるとうっすらと痕が残った。

「もうっ、また!」
「亜由美も付けてみる?」
 それはたまらない誘惑だった。亜由美を見つめる鷹條の瞳が熱情を含んでいる。

(私も痕をつけちゃうんだから!)
 付けてみる? なんて聞かれたら黙ってはいられない。

「付けるっ」
 やるならやってごらん? という顔で見られながら、なんだか悔しいような気がするから亜由美は鷹條の胸元に唇をつけると一生懸命ちゅうっと吸った。

 うっすらと赤く痕が残り、亜由美はドヤ顔をして見せる。
「できたわ!」
「たまらないな。可愛い過ぎだろ」

 亜由美は胸元に痕をつけたままの鷹條にベッドへ押し倒されてしまう。

 確かに自分のつけた痕というのは妙に独占欲を刺激されるもので、この人は自分のものだという感覚が強くなり、ちょっと興奮させられる。

「この痕も……」
 鷹條の指が亜由美の肌の痕をなぞっていく。
「この指輪も」
 左手を繋がれて、絡んだ指の薬指に鷹條はキスをする。

「亜由美は俺のだって思えて興奮する」
「私も分かるよ。その痕、どきどきするから」

「一緒だな」
「うん」
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