遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「年より上に見られることは慣れているからいいんです。ただ、可愛くないから因縁つけられちゃうんですかね? もっと融通利かせれば、ひどく言われなくて済むんでしょうか?」

 朝からのこともあって亜由美はひどく落ち込んでいた。

 奥村は亜由美に向かって微笑みかける。
 しかし心の中は荒れに荒れていたのだ。

 ──私の! 可愛い後輩を! 自分のことを棚にあげて、よくも、よくもいじめてくれたわね!

「一条の言うことなんて、気にしなくていいからね。大体、受領書が嫌ならシステム申請すればいいのよ。それを面倒くさがるあいつが悪い。しかもうちの部署は一条狙いの女子が彼を甘やかすから余計良くない。杉原さんは大丈夫。正しいのよ」

 亜由美の頭を撫でながら、一条のやつ、絶対いつかシメてやる。
 そう言葉には出さずに心の中で呟いた奥村なのだった。

 そうして、引き出しの中から取り出したとっておきのチョコレートを亜由美の手に載せる。

「経理部では融通効かないくらいじゃないと困るわ。杉原さんはうちの大事な課員なの。みんなそれを分かっているから大丈夫」
「ありがとうございます」

 綺麗な包装紙に包まれたチョコレートは間違いなく亜由美の心を癒してくれた。
 

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