遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「大丈夫かなぁ」
「そんなに緊張しなくて大丈夫」
 けれど、父親も警察官と聞いてはどうしたって緊張してしまう。

「うちにこんな嫁は相応しくないって言われたらどうしよう……」
 亜由美の不安に鷹條はくすっと笑う。

「そこまでたいそうな家ではないから、そんなことは言わないと思うぞ」
 車を停めた鷹條は助手席の亜由美を軽く抱き寄せる。

「俺が選んだ俺の好きな人だ。相応しくないなんて、思わないよ」

 車を停めたところが鷹條の家の前で、表札に『鷹條』と表記されているのを見て、亜由美は緊張してしまう。

 とてもシンプルな造りの二階建ての戸建てだった。
 車を降りた鷹條が呼び鈴を押すと、女性の声で返答がある。

『ちーちゃんっ!? お帰りなさい! 今行くわね』
「ちーちゃん……」

 思わず亜由美は鷹條を見てしまった。鷹條は薄らと赤くなって、口元に手を当てていた。
 思わぬことで動揺したらしい。

「全く……いつになっても……」
 亜由美は緊張が一気にほぐれたような気がした。とても仲の良い家族なのだと察しがついたから。

 ガチャっとドアが開くと、鷹條の母が元気な笑顔を向けてくる。

「いらっしゃい! こんにちは! 入って入ってー!」
「初めまして。杉原亜由美と申します」
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