遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 一人が鷹條にそう声をかけると、何人もがお疲れ様です!とこだまのように声が響く。

 中にはあれが警備課の……という声も聞こえたが、その表情には尊敬の念が含まれていて、亜由美は少し誇らしい気持ちになってしまった。

 しかし、人がたくさんいる客間のこの状況がどういう状況なのか、亜由美には全く分からなかった。

 そんな亜由美を鷹條がサッシの開いている庭に手招きする。
「亜由美、こっち」

「はい。あ……すみません、お邪魔します」
「お疲れ様です!」

 大きな声で挨拶されながら、亜由美は鷹條のいる庭に出てみた。

 庭の横には小さな道があり、それもてくてく歩いて行くと門がある。鷹條はその門を開けた。すると、門の先にパトカーが停まっていたのだ。

「え? え? パトカー?」
 くすくす笑って鷹條は亜由美を手招きしている。

 なんと、庭の小道は警察署の裏と繋がっていたのだ。庭の小道はちょうど警察署の駐車場の脇に当たる部分にひょこっと出るようになっていて、その駐車場を通り抜けると隣には『守家警察署』と書かれた大きな建物が立っている。

パッと見は分からないが、先ほどの鷹條家と同じ敷地のようだ。

 亜由美は唖然とした。
「ど、どういうこと?」

「今、父はここの署長をしてる。あの家は官舎なんだ。家にいたのは多分、寮の若い部下達だと思うよ。俺も所轄署にいた時は署長の官舎で休日にご馳走様になったりした」

 家かと思ったら官舎だったらしい。
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