遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 鷹條が説明していると、ちょうどパトロールにでも出ていたのか、パトカーが一台駐車場に戻ってくる。
「お疲れ様です!」

 こちらに向かって大きな声で挨拶するのに、鷹條は軽く手を振った。
「お疲れ様です」

 鷹條はまた亜由美に向かって話しかける。
「署長となると緊急時に対応しなくてはいけなくて、こうして警察署と署長官舎が敷地で繋がっているケースもあるんだ。表は普通なんだけどね?」

「驚いたわ……」
「そうだよな。警察署から見ても分からないようになっているし、表から見ても分からないのに、中では繋がっているんだ。面白いだろう?」

 鷹條の言う通り、表からは全く分からなかった。
「祖父も退職直前は小さな所轄署の署長をしていて、そこの官舎も似たような造りだったな。敷地の隣が警察署でパトカーが出入りするんだ。子供にはたまらない遊び場だったよ。制服警察官は皆親切で、よく面倒を見てもらったし」

 子供の頃の鷹條少年が目をキラキラさせながらパトカーに釘付けになっていたり、それを可愛がる制服警察官という光景も亜由美は想像するとなんだか微笑ましい気持ちになる。

「全ての警察署がこの造りになってるわけじゃない。都心は土地の関係もあるから官舎を少し離れたマンションで借り上げているケースもある。それでも徒歩圏内ではあるけど」
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