遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 母はにこーっと猫のように目を細める。
「いいわねぇ、仲が良くて」
「あ、あのっ、私もお手伝いします!」

「大丈夫よ? あの子たち片付けて帰ってくれたから。人数が多いから一度に片付いたわ」
 そこへ父がお菓子の入った皿を持って客間へ入ってきた。

「なんだー、二人で温泉にいってたんだな」
 お土産のお菓子で分かったらしい。鷹條は庭から客間に上がる時も、亜由美の手を繋いでいてくれている。

「うん。泉質がとてもよかった」
「美人の湯とか言うらしいな」

 母に「どうぞ」と座布団を差し出されて、亜由美は「ありがとうございます」と受け取り座る。
 二人が座ると両親も目の前に座った。急にかしこまった雰囲気になる。

「お付き合いしている杉原亜由美さん。結婚も考えていて、上にも報告はしています」
 さっきも紹介はしてくれていたけれど、改めて将来のことや、上司のことも含めて鷹條は亜由美を両親に紹介してくれた。

「そうか……。まあ、千智がここへ連れてくるというのだから本気だろうとは思っていたよ」
 父の言葉に鷹條はこくりと頷く。

「いろいろあって、亜由美は内部事情も分かってる。けど俺が護りたいって思ってる人なんだ」

「ああ、大変な目にあったそうだね」
「あ……の」
 亜由美が声を上げると、ん? と父が首を傾げた。本当に鷹條ととても良く似ていた。
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