遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「亜由美ちゃん、これって……」
「あ、はい。結婚しようって言われました」
「わー、いいなあ」

 本気で羨ましそうなのも、奥村が言うとなんだか可愛らしい。
「ストーカー事件も彼が解決してくれたんだよね。カッコいいよねぇ」

 そこで亜由美は鷹條としていた話と思い出す。
「あの、事件も解決しましたし、いろいろご心配をおかけして駅まで一緒に行ってくださったり、本当にお世話になったので、お食事をしたいんです。お礼の気持ちも込めて」

「えー、そんなのいいよー。だって一人じゃ怖いじゃない。できることをしただけだけだし、お礼って言われるほどじゃないよ」

 気風の良い姉御肌の奥村なのでさらっと遠慮されてしまった。一生懸命亜由美は伝える。
「鷹條さんとも一緒にお食事してほしくて」

 亜由美の様子を見て、奥村は微笑む。
「旦那さんになる人を紹介してくれるの?」
「はいっ!」

「じゃあ、喜んでご一緒します。でも、ごちそうとかしなくていいからね」
「それは鷹條さんと相談します」

 ふふっと笑った奥村に笑顔を向けられる。
「亜由美ちゃんて、本当に可愛い」

 亜由美の外見から『キツそう。澄ましてる。冷たそう』と言われることはあっても、可愛いと言われることの少ない亜由美は照れてしまう。

「そんな風に言われたことないです」
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