遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 鷹條がそう言うと久木が言った。
「そうだ、鷹條くん、礼服も貸し出しの申し出が必要ですよ」

「あ……そうなんですね」
「礼服?」
 首を傾げた亜由美に久木がにこりと笑う。

「警察礼服、儀礼服と呼ばれている服です。普段着用しませんが、結婚式などの特別な時は着用を許されます。金モールや記章がついている華やかな制服なので、結婚式では人気ありますね」

(確かに、あまり街中では見ないけど金モールが付いた制服あるかも! それ絶対千智さんに似合う!)
 それだけで亜由美はどきどきしてしまった。

「あ、想像しました?」
「しました。千智さん、着てほしいです!」
「着てほしいのか?」

 鷹條に尋ねられこくこくっと亜由美は頷く。そんなの絶対に見たいに決まっているからだ。なぜか隣で奥村も頷いているのは謎だったが。

「分かった」
「鷹條くんが甘くて驚きますね」
 亜由美の言うことを素直に聞く鷹條のことを、久木がほほえましそうに見て、言った。

「あ! 分かります。亜由美ちゃんも普段すごくしっかりしてて、こんな風に甘えることはないから側で見ていて本当にお似合いだなぁって思うんです」

 普段の業務の時とは違う鷹條の姿に微笑む久木に、奥村も同意する。
「そうですね。本当にお似合いで幸せになってほしいお二人です」
「その通りです」

 お礼で食事に招待したはずだったのに、とても幸せな気持ちにさせられてしまって、改めていい上司に恵まれたと亜由美と鷹條は目を合わせてお互いに微笑んだ。
 
 
< 200 / 216 >

この作品をシェア

pagetop