遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「今度一緒に見に行く?」
「え? いいの?」
 母と一緒にドレスを見に行けるとは思っていなかった亜由美はうれしくて笑顔になる。

「もちろんよ。娘と一緒にドレスを見に行けるなんて幸せだわー。決めてしまわなくても、結婚が決まって一緒に選べるってだけで幸せ」

 母のこういう明るいところが亜由美は大好きだ。
「うん。じゃあ、一緒に行こうね。予約しなくちゃ」

「亜由美ちゃんにはどういうのが似合うかしら? やっぱりお姫様に憧れてるの?」

「似合うものの方がいいかなぁって思っているの」
 久しぶりの親子の時間はゆっくりと夜更けまで続いたのだった。

 亜由美の両親は仕事の関係で三ヶ月ほど日本に滞在することになったらしく、その間に鷹條との両親の顔合わせを済ませたり、式場を決めたりと結婚式の準備を進める。

 いろいろと検討した結果、会社近くのチャペルを併設している迎賓館で結婚式と披露宴をすることに決めた。

 鷹條の先輩もそこで結婚式を挙げることが多いと聞いたし、その場所は亜由美の会社からも近く、交通の便もいい。

 また、ブライダルプランナーの担当者が一顧客一担当と聞いたら、鷹條がここにしようと言ったのだ。

 多くは語らなかったけれど、亜由美がプランナーに相談しやすい式場を選んでくれたのだろうと思う。

 会社の先輩の中には亜由美が結婚するのだという話を聞いて『男性は結婚式の準備では本当に当てにならないし、それで何度喧嘩したか分からない』と言ってきた人もいたのだが、今のところ結婚式の準備で鷹條と喧嘩をしたことはない。
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