遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 ──亜由美のしたいように。
 そう言ってくれていても、必要な時にはプランナーに必要なことを伝えてくれるのは本当に助かった。

 忙しい中でも鷹條は二人の結婚式の準備には協力的だったし、式を楽しみにしてくれていると感じる。

 ドレスの下見に行く日、約束通り母が一緒に来てくれたけれど、鷹條も非番だからとついてきてくれた。

 ドレスの下見だけのはずなのに、結婚式場の衣装室は大きな窓から光の入る大きな部屋だった。壁沿いのラックにはたくさんのドレスがかかっている。

 大きな窓を衣装室に備えているのは、陽の光の元でドレスを披露することが多いのでイメージの違和感をなくすためと説明を受ける。

「衣装自体は普段は光の当たらない場所に保管されていますし、こちらも実はカーテンを閉めたら遮光性は高いんですよ」

 そのため、全てのドレスがこのラックにあるわけではなく希望があれば倉庫からまた持ってきてくれるらしい。
 細かな気遣いが素晴らしいと亜由美は感じた。

「例えば、結婚式の時は白のウエディングドレスをお召しになられて、披露宴ではお色直しとしてカラードレスをお召しになるという方もいらっしゃいますね」

「お色直し……」
 正直に言えば亜由美はドレスのお色直しは考えていなかった。結婚式と披露宴をするのは本当に単に結婚したことをお披露目できればそれでいいと思っていたからだ。

「新郎様も結婚式はタキシード、披露宴は制服で……という形もございます」

 ここの結婚式場は鷹條の先輩も何組か結婚式を挙げていて、慣れているせいかそんな提案もしてくれる。
< 209 / 216 >

この作品をシェア

pagetop