遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 ハンカチを目元に軽くあてる母の肩を亜由美はそっと撫でる。
「涙は本番まで取っておいて。ね?」
「うん。亜由美……すごく綺麗だ」

 ワンショルダーでショルダー部分をリボンで装飾され、百合のようなデザインのマーメイドドレスはスレンダーなスタイルの亜由美にとても似合っていた。

「亜由美、他にも着てみたら?」
「あ……うん」

 実は、Aラインのドレスが気になっていた。けど、イメージ的に何となくこちらかなと思ってマーメイドドレスを手に取ったのだ。

 もちろん素敵だし、似合っていないとも思わないけれど。
 鷹條にはきっと亜由美のその気持ちも見抜かれている。

「他に気になってるの、あるだろ?」
 こくっと亜由美は頷いた。
 本当に心からこの人が大好きだ。


 
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