遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「鷹條、お前もだ」
 鷹條は同僚に引っ張られて会場の真ん中に連れ出される。

 二人にはガチャッと紅白のリボンの付いた手錠を片方ずつかけられてしまった。

「皆様ご安心ください、犯人は無事逮捕されました。二人には一生幸せに過ごす刑を与えたいと思います。お二人ともどうぞ幸せに!」

 鷹條と手錠でつながれたまま、席に戻る。しかもかけられた手錠は本物ではないおもちゃの手錠だった。

「あ、これおもちゃなのね」
「本物だったら、問題がありすぎるだろ」
 確かにその通りかもしれない。

「定番の余興のうちの一つなんだ」
「ああ、そうなのね」
 だから鷹條は苦笑していたのだと分かるけれど。

(定番のうちの一つ!? 他にもあるってこと?)
 亜由美の頭の中に浮かんだ疑問は席に座るまで続いた。着席すると鷹條の後輩らしき人物がカギを持って現れる。

「突然すみませんでした。大丈夫ですか?」
「はい。楽しい余興をありがとうございました」

 鷹條たちは慣れているかもしれないが亜由美には初めてだったし、亜由美側の親族や友人は喜んでいたのが見えたからだ。

「これ、お渡ししますのでよかったら使ってくださいね」

 そうにっこり笑ってリボンで飾られた手錠を渡されたのだが……。
(使うの? これおもちゃでしょ? 誰が?)
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