遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「今、わざと言った?」
 尋ねた亜由美に鷹條はにっと笑った。
「わざとだ。これで二人の共通の思い出になったな」

 なんて甘い罠だろう。捕えられたのは亜由美も同じだった。
「思い切り、愛していいか?」

 こくりと頷きつつ、亜由美は口を開く。
「あの......でも明日は空港には間に合う時間に起きられるように......」
 亜由美の愛する人がにこりと笑う。
「善処しよう」


 亜由美が知っている少女漫画の世界なら遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人なのだろう。

 実際にはぶつかったのは運命の人ではなかったけれど、助けてくれたのは運命の人だった。

 柔らかくキスを交わした鷹條は甘く優しく亜由美に囁く。
「なあ、刑を執行していいか?」
「刑?」
「一生幸せに過ごす刑」

 亜由美は思い切り微笑んで運命の人に抱きついた。
「お願いします」

 そんな刑なら終身刑で構わない。

 
     *⋆꒰ঌ┈┈END┈┈໒꒱⋆*
 

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