遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 しかし実のところ、愛読書は少女漫画で、好きな映画は恋愛物語、可愛いものやコスメも好きで、部屋の中はリボンとピンクとフリルに彩られている乙女系女子なのだった。

 亜由美は商社で経理をしている社会人二年目だ。
 経理部にはいろんな仕事があるが、亜由美はその中でも社内の経費関連の業務を担当している。

 両親が銀行勤めだったこともあって、お金について小さい頃からしっかり躾けられていたことは今の業務にも役立っている。

 だからそんな風に育ててくれた両親には感謝だ。
 両親は早々と退職して今は二人で海外に移住し優雅に過ごしている。

 しっかりした躾と教育を施してくれたことには本当に感謝している……しているけども、もっといろいろ教えておいてほしかった。

 (た……例えばこんな風に駅で輩に絡まれたらどうしたらいいのかとかねっ!)
 
 遅刻しそうに急いでる時にぶつかるのって、転校生とかじゃないの!?
 なんでこんな怖いおじさんにぶつかっちゃったかな?

 目の前の怖そうな男性は亜由美を離してくれそうな気配がない。

 ──こ、怖いっ。誰か助けてっ!


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