遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
5. 今度こそ運命の出逢い
「はーっ……」
 部屋に着いて、亜由美は大きくため息をつく。

(勇気が出なかったわ)
 固くて融通は利かなそうだけれど、鷹條はとても優しい人だ。

 公僕って公務員のことよね? 公務員ってお礼を受け取ることもできないんだっけ?

 公的な立場であれば、それもそうなのかもしれないなと部屋着に着替えた亜由美はシャワーを浴びて、リビングでくつろぐために、ソファに腰掛けテレビをつけた。

 国会が非常に紛糾したものの、今日予算案が可決された……というニュースをやっていて、それ自体には大した興味はひかれなかった。

 亜由美が、ん? と釘付けになったのはその画面だ。
 ──た……鷹條さんっ!?
 先ほど別れたばかりだ。少し前までずっとそばについていてくれた。

 その姿を見間違うはずはない。
 端正な顔ときりっとした目元。いつも表情を出さないけれど、警護中は普段よりさらに隙のない雰囲気だ。

 議場から出てくる大臣の一人を警護して、真後ろに着いている鷹條の姿はテレビにしっかり映っていた。

 じっと目を凝らすと、ちらりとSPバッジが見える。
(SPだったの!?)

 それは身元を明かしたくないわけだ。
 なんとなくそれは亜由美にも察しがつく。

 ペラペラと周りに吹聴するようなことではないだろう。ましてや、初めて会った人になんて特に。

 雲の上の人だわ……。
 要人警護を行うSPは高い警護技術が求められ、警察官の中でも誰でもなれるものではないと以前テレビで見た。

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