遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 SPとしての条件や適性を認められ、上司の推薦も必要で、特殊な訓練を受けても全員がSPになれるわけではない、とその番組では言っていたのだ。

 警察官の中でも、エリート中のエリートがSPなのだと。

 そんな立場だから、亜由美にも優しくしてくれたのだし、頑なにお礼を拒むわけだ。

 むしろ、そんな人がたまたま通りかかって助けてくれたことこそが、ラッキーなことだったのだ。

「そっか……」
 素敵だと思っても、手が届くような人ではなかったのだ。
 そう思うと、また少しだけ泣きそうな心地になった亜由美なのだった。

 
 ──経費計上はシステムから。
 何度もそう通達を出してもらっているのに、一部の社員だけが守らない。

 自分達にとって都合よく処理をしてくれること。それが亜由美達、経理課の仕事だろうと思っている節すらある。

 経理課の業務は経理を管理することで、計上された会社のお金を正しく分類するのが仕事だ。
 まずは計上してもらわなければ業務ができないものなのだが、なかなかそこを理解してもらえない。

 一条はフロアを経理課に向かって歩いてきて、クリアファイルに入った領収書を亜由美のデスクに投げるように置いて「これ、処理しといて」と去ってゆく。

「困ります。以前にもお伝えしましたが、受領書の作成と計上書類を添付してください」

 亜由美がそう声をかけると、その場で足を止めた一条に強く睨みつけられた。
「忙しいんだよ! そんなことやっている暇はないんだ!」

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