遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 けどそれだけじゃなくて何となく、鷹條は人目のある開放的な場所を亜由美のために選んでくれたのではないだろうかと亜由美は感じた。

「誘ってしまったけど、大丈夫だったか?」
 そんな風に声をかけてくれる鷹條は、やっぱり優しい。

「嬉しいです。あ、お食事ごちそうさせてください」
「だから、それは無理なんだ」

「鷹條さん、警察官なんですものね」
「え!?」

 今日も身分を明かしたのは久木で、もちろん久木の部下なのだから、鷹條も警察官なのだと察することはできる。

 けれど鷹條が警察官であると亜由美が知ったのは、今日のことがあったからではない。

 亜由美は頬を赤くして、軽く俯く。
「ニュースで見ました」
「ニュース?」
「国会のニュース……。鷹條さん映ってましたから」

 鷹條も一瞬赤くなって、微妙な表情になる。
「あ、あー……そうだな。最近はSPにはあまり配慮はされないからな。捜査員なんかは捜査に支障が出るといけないから、モザイクかけてくれたりするんだが」

「素敵でしたよ?」
「そんなの見なくていい」
 照れている鷹條は今までと違って、亜由美は嬉しくなってしまった。

 先ほどまでの沈んだ気持ちは徐々に晴れてきていた。

 メニューを聞きに来た店員に亜由美はホットサンドとカフェラテを注文する。鷹條もコーヒーを注文していた。
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