遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 交際相手がいる場合は報告をすることになっているのだ。

 様々な理由があるが、交際相手が犯罪集団や反社会的勢力などと関わりがないかなどの確認が一番大きな理由だろうと言われている。

 鷹條のいる警備局では要人の警備情報の入手ができる立場にあり、万が一テロリストの仲間である女性と交際してしまったとなれば、それは大変なことになる。

 そんなことはあり得ないようにも思うが、警察官という職業自体に誘惑が多い職業なのだということは散々研修で言われることだ。

 恋人に関してはそんな危惧もあり身辺調査をするとも言われているが、鷹條は実際にどんな調査をするかまでは知らない。
 もしそんな調査をするとしたら、それは上司の仕事だ。

 なぜ報告しなければいけないか、その理由についても十分に承知している。
 やましいことがなければ恋人の有無だけではなく身の回りの変化は報告しておいた方がいいというのは分かっている。それはリスク回避のためだ。

 公務員でもあり、警察官という特殊な職業である以上やむないことは分かっていてこの仕事を選択しているのだから。

 それに鷹條の場合はまだ久木が直接聞いてくれて、メモを取る程度のことなのもマシだ。
 部署によっては交際に関しても報告書を書面にして出さなくてはいけないところもあるらしい。

 警察官の仕事については理解しているし、出せと言われればもちろん出すけれど、恋人のことを文書にして提出しろと言われたら、鷹條ですらもやはり少し抵抗はあるだろう。

 久木はそんな部下の気持ちも十分に汲んでくれる人だ。
< 61 / 216 >

この作品をシェア

pagetop