遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
『勤務体制は独特なんだけど、今週末は非番なんだ。遠出はできないから近場で』
「あ、それなら……」

 亜由美は水族館やプラネタリウムも併設している商業施設の名前をあげる。

『行ったことない。行ってみたいとは思ってたけど』
「じゃあ、そこにしましょう」

『分かった。時間とかはまた後で連絡する。無事に帰ったかを確認したかったから』

 じゃあ、ゆっくり休めよ、と電話を切られて亜由美は急に顔が熱くなってしまった。
 優しいとは思っていたけれど、心配して電話を掛けてくれるとは思わなかった。

 メールでも済ませられるかもしれないことを、わざわざ電話してくれたのが嬉しかった。

 とても大事にされている。
 それは心がとても温かくなって、こんなに幸せな気持ちになるものだったのだと亜由美は知った。


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