遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 鷹條と一緒にいると二人でいることに、とても幸せを感じることができる。
 ふっ……と鷹條が笑った気配がして、顔を上げたらその端正な顔で甘く微笑んでいたのだ。

 その後は商業施設の中を見て回ったり、亜由美が限定のお菓子を購入するのに付き合ってもらったりした。

 予約したプラネタリウムまで時間があったので、散々商業施設内を歩き回ったこともあり、カフェに入ることにする。

「結構歩いたな。大丈夫か?」
「私は平気」
 そう言った亜由美を鷹條はまたじっと見る。

 鷹條は柔らかく微笑んだ。いつもは表情を顔に出さないことの方が多い鷹條なのに、今日はいつもと全然違って、どきどきさせられてしまうのだ。

「大丈夫そうだな」
「え?」

「君はすぐに自分の気持ちをこらえて我慢してしまうから。だから、あの同僚の奴も亜由美に執着したんだろう」

 今日会ってから、鷹條に何度もじっと見られていることは感じていた。
 それは鷹條の観察力で亜由美のことを注意深く見ていてくれたということだったらしい。

 確かにその通りだ。
 今まで自覚したことはなかったけど、この前課長にも言われて、改めて自分の性格を振り返ってみたのだ。

 つい相手の都合を最優先に考えてしまう亜由美は、自分の気持ちを理解してもらえないことも多い。
 自己主張できればいいのだろうが、キツい人だと思われるのが嫌なので主張はしないようにしていた。

 そんなことまではさすがに知らないはずだが、鷹條には読まれてしまっている。
 頬が赤くなってしまったことを亜由美は自覚した。
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