遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「無理しないようにね」
「ありがとうございます」
そう言ってまた頭を下げて亜由美は自分の席に戻った。
「聞いたよー、変な人に駅で絡まれたんだって?」
隣の席の奥村絵梨香が亜由美を気づかって声をかけてくれた。
「そうなんです。申し訳ありません。遅れてしまって」
「仕方ないよ。警察行った?」
席に座ってパソコンの電源を入れながら、亜由美は首を横に振る。
「いえ。通りすがりの方が助けてくださったんですけど、駅員さんを呼ぶ前にいなくなってしまって」
「あー、そうだよね。駅だと人も多いし、さっと逃げられちゃうよね」
奥村は亜由美の教育係をしてくれた先輩社員だ。亜由美が羨ましくなるほどの小柄な身体と、黒目勝ちの大きな瞳と可愛らしい丸顔の持ち主だった。
二人で並んでいて、どちらが先輩でしょうか?と聞かれれば間違いなく亜由美の方を指さされてしまうことだろう。
けれど奥村は可愛らしい見た目に反して、中身はなかなか尖っている。業務上でも判断は早いし白黒がはっきりしていた。
できること、できないこと。やらなくてはいけないこと、やってはいけないこと。
そのラインがとても明確で、新入社員の亜由美にも分かりやすく説明してくれて指導してくれているカッコいい先輩だ。
「でも。月末の繁忙日だったのに、遅れてしまって……」
「大丈夫! ちょっと遅れただけでしょ? 今日はまだまだあるからねっ」
奥村らしい答えに亜由美は笑って業務を開始した。
「ありがとうございます」
そう言ってまた頭を下げて亜由美は自分の席に戻った。
「聞いたよー、変な人に駅で絡まれたんだって?」
隣の席の奥村絵梨香が亜由美を気づかって声をかけてくれた。
「そうなんです。申し訳ありません。遅れてしまって」
「仕方ないよ。警察行った?」
席に座ってパソコンの電源を入れながら、亜由美は首を横に振る。
「いえ。通りすがりの方が助けてくださったんですけど、駅員さんを呼ぶ前にいなくなってしまって」
「あー、そうだよね。駅だと人も多いし、さっと逃げられちゃうよね」
奥村は亜由美の教育係をしてくれた先輩社員だ。亜由美が羨ましくなるほどの小柄な身体と、黒目勝ちの大きな瞳と可愛らしい丸顔の持ち主だった。
二人で並んでいて、どちらが先輩でしょうか?と聞かれれば間違いなく亜由美の方を指さされてしまうことだろう。
けれど奥村は可愛らしい見た目に反して、中身はなかなか尖っている。業務上でも判断は早いし白黒がはっきりしていた。
できること、できないこと。やらなくてはいけないこと、やってはいけないこと。
そのラインがとても明確で、新入社員の亜由美にも分かりやすく説明してくれて指導してくれているカッコいい先輩だ。
「でも。月末の繁忙日だったのに、遅れてしまって……」
「大丈夫! ちょっと遅れただけでしょ? 今日はまだまだあるからねっ」
奥村らしい答えに亜由美は笑って業務を開始した。