遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 周りにはたくさんの人がいるし、顔立ちの整った鷹條のことだ。今の手へのキスだけでも目立ってしまった気がする。
「だな。その代わりだよ」

 周りの人々はお似合いの美男美女がイチャイチャしていて、彼氏の方がいかにも彼女を溺愛している風なので微笑ましくチラ見していただけだ。
 
「時間だな。行くか?」
 鷹條が買い物をした手提げを自然に手にして、逆の手を亜由美に差し出す。

 この人を大事にしたい。
 そう思い、亜由美は鷹條に笑顔を向けた。
「はい」

 それから予約したプラネタリウムを二人で観た。鷹條が予約してくれたシートは、寝転がって観ることができるものだ。二人で横に並んでころんと寝転がる。

 観ている最中も鷹條は亜由美と手を繋いでくれていた。

 肩を寄せ合って、隣同士で横になるシートは吸い込まれそうな天の川をまるで二人きりでたゆたっているような気持ちにさせられた。

 そのあまりの綺麗さに感動した時に、鷹條がその手をきゅっと強く握ってくれる。

 その時、周りには聞こえないような極々小さな声で鷹條が亜由美の耳元に囁いた。
「いつか、一緒に旅行に行きたいな。こんな綺麗な空とか、亜由美と見たい」

 それは亜由美もそう思ったので、こくこくっとうなずく。

 亜由美はこの人と一緒に観ることができて、とても嬉しくて幸せだと思った。
 繋いでくれた手にそっと寄り添う。
 鷹條が笑った気配を感じて、亜由美の胸は甘い満足感で満たされた。
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