遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 部屋の中に入った鷹條が無言になるのが分かる。

 部屋の中はピンクやフリルに彩られているからだ。
「こんな部屋……引きますよね?」

 大人びた雰囲気だから、もっとシンプルな感じかと思っていたのになにこの乙女!? 全く雰囲気と合ってない萎える! とまで言われたこともある。
 本当に萎えたらしくそのまま別れた

「可愛いじゃん、女の子の部屋って感じで」
「本当に?」
 はぁ、と聞こえたため息。

「亜由美、俺のことを誰と比較してる? とにかく君が今までろくでもないヤツと付き合ってきたのは分かった。俺を一緒にするな」
「やっぱりろくでもない人達なんでしょうか!?」

 ろくでもないかもと思っていたけれど、ハッキリ明言されるとやっぱりそうだったのかと思ってしまう。

「それは分からない。でもありのままの亜由美を否定したのなら、それは違うだろう? そのままを受け入れてほしいんじゃないのか? 俺はそのままの亜由美が好きなんだけど?」

 そのままの亜由美が好きだと言ってくれて、目元がまたじんわり熱くなる。
 この人はなぜこんなにも亜由美が欲しい言葉を自然にくれるのだろうか。

「鷹條さん……」
千智(ちさと)!」
 亜由美の胸を昂らせておいて、拗ねたように名前を呼ばせようとする。

(どうしよう。大好き……)
 亜由美をベッドに降ろした鷹條は体重を掛けないようにそっと覆い被さる。

 その整った顔が近くて、覆い被さるような体勢はまるで鷹條に包み込まれているようで、亜由美は鼓動が大きくなるのを止めることができない。
< 76 / 216 >

この作品をシェア

pagetop