遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「もう自制なんて、できなさそうなんだけど」
 胸元から覗き込んでくるその上聞いたことのない色香を含んだ声にくらりとする。

「しない……で」
「了解」

 その時、鷹條の手が亜由美の濡れた部分に触れた。くちゅっという聞いたことのない湿った音に亜由美は戸惑う。

「あっ……や、だ……め」
 戸惑ってつい漏れてしまった声に応じて、鷹條がその手を止める。

「いや? ダメ? なら止める?」
「あ……」

 ──きっと分かっている。

 緩く唇を舐めて、口の端をきゅっと引き上げているその表情は亜由美がいやとか、ダメなんて思っていないなんてこと分かっている。

「ズル……いっ、分かってるくせに……」
「亜由美、可愛いな。本当に綺麗だ。感じてても、乱れてても可愛い。全部欲しい」

 一瞬だけ止められていた指が、今度はぐちゃりと音をさせながら、奥にまで入ってきた。

「んっ……いっ……」
「え?」
 今度は戸惑った鷹條が慌てて、その指を引き抜く。

「狭い……。亜由美、初めて……か?」
 こくり、と亜由美は頷く。途端に、鷹條は表情を強ばらせた。

(どうしよう、面倒だって思われたのかも)
 さっきまで、我を忘れるほどに気持ちよかった。亜由美のことを大事にしてくれる鷹條とすることは、自然なことだった。
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