遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 背中どころか腰までぞくぞくして、足を閉じたいのに、その足の間には鷹條がいて閉じることができない。

「分かんない? じゃあ、なんでそんな風に腰が動いて、中が俺を離すまいとしてきゅっとしているんだろうな?」

「いじわる、してるの?」
 気持ちよさが逃がせなくて、涙目になりながら亜由美は鷹條をじっと見る。

「ヤバい。つい腰が動いちゃう亜由美とか、ちょっと涙目で睨むのとか、たまらなすぎる。可愛い。綺麗。好きだ」

 そんなことを言われながら一つになって身体を揺さぶられる亜由美だってすごくすごく幸せだ。
「ん、私も、すき」

 一生懸命そう言って、亜由美は近い距離にいる鷹條の両頬を手でそっと包み込む。
 その瞬間ぐんっと奥まで鷹條が入ってきて、亜由美は喉を反らせた。

「んッ……あ、ぁぁあっ……」
 もっと痛いかと思っていた。

 なのに鷹條は終始優しくて、理性が飛びそうだと言ってはいてもずっと思いやってくれていた。

 徐々にその腰の律動が激しくなってきて、亜由美もその流れに身を任せた時に、中にいた鷹條自身がびくんっと大きく震えたのを感じた。

 その刺激は亜由美の身体よりも、心をとても満たしてくれた。

「大丈夫……か?」
 まだ荒い呼吸を整えながらも、鷹條は亜由美の身体を気づかってくれる。

「私、上手くできた、かな?」
 一瞬だけ目を見開いた鷹條はとても綺麗に亜由美に向かって微笑んだ。
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