遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「うん。すごく、気持ち良かったよ。とても上手だった。俺はもっとしたい。亜由美は?」
「私も……もっとしたい。あ、今日はできるか分かんないけどっ……」

 慌てて付け足した亜由美の額に鷹條は軽くキスを落とす。
 そしていたずらっ子のように、にっと笑ったのだ。

「善処する」
 ──ぜ、善処……とは!?
 


『今日は直明け(当直明け)なんだ。一緒に食事にでも行かないか?』

 鷹條は忙しいながらも、たまにメッセージだけでなく、亜由美に通話してくれて状況を確認してくれることが嬉しかった。

 本当にその言葉通り大切にしてくれているといつも実感させてもらっている。
 亜由美もその鷹條の独特な勤務に少しずつ慣れてきていた。

 基本的に鷹條の勤務は日勤と呼ばれる午前八時半から午後十七時半までの勤務がメインとなっている。

 とはいえ、月に何回かはチョクと呼ばれる当直勤務があるし、思いがけない警備や訓練などで休日がつぶれてしまうことも結構ある。

 驚いたのは当直の時は通常勤務の後に、そのまま当番として勤務に就くのだと聞いた時だ。

「え? 夕方に出勤するとかじゃなくて?」
「ないな。だから当直の時は二十四時間勤務になるし、部署によってはそのまま事件の後処理とかなんかしていたら、四十八時間勤務とかある」

 四十八時間勤務など、想像もつかない。呆然としてしまった亜由美に鷹條は苦笑していた。
「いや、仮眠は取るからな?」
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