遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
10.恋愛っていいものですね
「千智さん、また人助けしていたのね」
 困っている人を放っておくことができない正義感の強い鷹條だ。朝倉も綺麗な顔を微笑ませた。

「おや? 亜由美さんも?」
 亜由美はにこりと笑う。その時鷹條にぎゅっと肩を抱かれた。

「朝倉、杉原亜由美さんだ」
「えーと……杉原さん」
 言い直した朝倉にその通りと鷹條はうなずいている。

「とても大事な人なんですね?」
「そうだな」

 愛おしそうに亜由美を見る鷹條に、名前で呼ぶのもどうやらダメらしいと知って、朝倉は楽しそうに笑った。

「とてもお似合いです」
 それを言われたのは本日二度目だ。

 鷹條と朝倉の出会いについては朝倉が話してくれた。
 酔っ払った客に朝倉が乱暴された時、たまたま居合わせた鷹條が暴れていた客を鮮やかに取り押さえたらしい。

「別のお客様が通報して下さって、お店に警察の方がいらっしゃった時もテキパキ対応して頂いて、それはそれはカッコ良かったですよ」
「分かります!」

 亜由美の時もそうだったのだ。それはとってもよく分かる。

「なんで、朝倉と亜由美が意気投合してるんだよ」
 鷹條がカッコ良い! という点で意気投合した朝倉と亜由美を鷹條は納得できないような表情でじっと見ていた。

「それはだって千智さんがカッコ良いっていう点では合意しかないもの」
 キッパリと言い切った亜由美の頭を鷹條が無表情でくしゃくしゃと撫でる。
「千智さんっ、くしゃくしゃになっちゃう」
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