遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 そんな亜由美と鷹條に朝倉は苦笑していた。
「仲良いなぁ。なーんか、羨ましくなっちゃいますね。お二人見てると、交際っていいものだなぁって思えてきます」
 それはまさに亜由美が実感していることだった。

 朝倉はお酒が飲めないという亜由美にもノンアルコールのフルーツベースのカクテルなどを作ってくれて、料理も二人で摘まみながら楽しむのにいいメニューを提供してくれる。

 時折、朝倉も参加しながら楽しい時間を過ごして、亜由美と鷹條はお店を後にした。

「ん」
 そう言われて鷹條が手を差し出していた。亜由美はその差し出された手をきゅっと握る。

「千智さん、寄っていく?」
「少しだけ。なんだか、離れがたくて……」

 離れがたいと言う鷹條の眉が少しだけ寄っていた。鷹條も自分の感情を持て余しているのかもしれない。

 皆にお似合いだと言われたら、とても幸せで、他からもそんなふうに見られているということが、とても嬉しかったのだ。


 亜由美が先にシャワーを浴び、髪を乾かしたりスキンケアをしている間、鷹條がシャワーを浴びに行く。

 この待っている時間が亜由美にはまだ慣れない。

 それでも、ふわりとボディソープの香りをまとって、濡れた髪をタオルで抑えながらキッチンに「水飲んでいい?」と現れる鷹條にいつもドキドキさせられてしまう。

「あ、うん」
 亜由美はカップボードからコップを取り出し、冷蔵庫に入れてある水を注いで、鷹條に手渡した。
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