お願いだから、好きって言って。

˚✩* そんな顔、見たくなかった side一吾 ˚✩*



 ――……



「王子、好きです……!」



 そう言って頭を深く下げる女子。
 クラスも名前も分からない、話した記憶すらない。

 本当なら無視したいけど、そうもいかない。


「マジか! ありがと。嬉しい」


 いつもの定型文を笑顔で返す。
 OKもNOも言葉にしない。


 そうすれば、面倒なことにならずに済むから。


 ガチ告白とか、恋愛とか、そういうのに無頓着で誰とも噂にならない。


 そういうキャラを確立してしまえば、OKでもNOでもない返事すら許されてしまう。



 王子とか、そんなあだ名が付いてしまってから、なんだか毎日が窮屈になった。


 何をしても噂になる。
 少しの失言でも周りに広まる。

 特定の女子と話したら、その女子が妬まれる。


 そんな影響力がいつの間にかついてしまった。


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