お願いだから、好きって言って。


 今日の女子は、今までの女子と少し違った。


 いままでの女子は「ありがとう」と微笑めば、それで満足してた。

 それなのに、10人くらいの女子を引き連れて俺を探しているみたいで……


「……めんどくせぇ」


 後者の裏の花壇に隠れながらしゃがんでいると、ガララと音を立てて窓が開く。


 咄嗟に窓の方へと視線を向けると、花壇の花をじっと見つめる女子がいた。


 俺の事なんて視界に入っていないのか、その視線が交わることはなかった。



 さらさらと長い黒髪を風になびかせ、綺麗な目から流れる一筋の涙が夕日に反射して輝く。





 ――泣いてる……?




 こんな、美人でも泣くことってあるんだ……
 ってか、一度も見たことない女子だ。学校の女子はほとんど知ってるはずだけど……


 なんか、目が離せない。



 そんなことを考えながら、じっと彼女を見つめていると……


 やっと気付いたのか、パチッと視線が交わる。



 やば……
 校舎裏の花壇でしゃがみこんで、女子生徒をジロジロ見てる変質者とか、怪しすぎて勘違いされたら嫌だわ。


 でも、彼女はそんなこと1ミリも思っていなかったみたいで、きょとんとした顔で俺の方を見つめる。




「マジでごめん! なにも見てないから!」


 逃げるように、叫びながら走り去る。



 初めて見る女子。
 放課後の図書室で……綺麗な顔で涙を流す彼女は、俺の事を知らないみたいだった。


 何故か胸がドキドキ鳴る。


 こんな感情……初めてだ。

 これじゃまるで、一目惚れじゃん。






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