お願いだから、好きって言って。


 あれから図書室を見に行ったりしたけど、眼鏡の女子がいるだけで、あの彼女を見つけることはなかった。


 見たことない人だったし、幻覚だったのか? なんて思っていると、背後から机を叩くような大きな音がして思わず振り返る。


「お前に課題やれって頼んだよな? なに呑気に図書室で本読んでるわけ?」


 本を机に勢いよく叩きつけながらそう怒鳴りつける女子。
 怒鳴られてるのは、いつも図書室にいる眼鏡の女子。

 名前は確か……双葉さんだったような。



 3年間とも1度も同じクラスになったことがないから、あやふやだけど。



 ――やめとけよ


 そう口を開きかけたその瞬間……


「ねー、王子。あのいじめられっ子と仲良いの?」


 別の女子は、後ろから制服をぐっと掴みながらそう問いかけてきた。



 これ……俺がなにかすると逆効果だ。


 きっとここで「やめろよ」って出て行っても、逆恨みでもっと酷いことされるかもしれない。


 かと言って見過ごすこともできない。
 直接止めることはできないけど、止める流れを作ることならできる。



「いや、知らない人。だけど……俺は人をいじめる女子は恋愛対象として見れない」



 深くは知らない女子だけど、見過ごすことはできなかった。


 こんなふうに、あの時の彼女を助けてあげれたら……彼女は涙を流さずに済んだのかな。



 そんな後悔も虚しく……
 その後の中学生活で、あの時の彼女の姿を目にすることは一度たりともなかった。




 ――それは、俺の終わったと思ってた初恋だった




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