お願いだから、好きって言って。


「じゃあさ、一吾じゃないなら誰が好きなのか教えてくれね? 俺ら応援するし」


 その篠塚くんの一言で、ゆにちゃんの表情がピシリと固まる。

 好きな人が鈍感すぎるとこんなしんどいのか……なんて哀れんでいると、篠塚くんはさらに追い打ちをかける。


「なんなら告っちゃえばいいんじゃね? 綾瀬可愛いから付き合えるって!」



 あぁ、うわ……篠塚くん、それはないよ。最悪だよ……
 それ「俺も好きな人いるからお互い頑張ろうな」って意味にも取れるし……なんか遠回しに断られてる感じするよね……



 あまりの篠塚くんの鈍感さに痺れを切らしたのか、ついにキレたのか、ゆにちゃんは大きなため息をつく。




「……じゃあ篠塚が、あたしと付き合ってよ」



 ゆにちゃんは、涙目でそう言ったあと、固まって動かない篠塚くんに向けて「ほら、やっぱり無理じゃん」と小声で呟いて教室を出てしまった。


< 170 / 177 >

この作品をシェア

pagetop