お願いだから、好きって言って。
「あたしは無理だろうけどさ、花恵と佐藤、双葉サンとその好きな人6人でトリプルデートしたいね!」
憧れる~! と言いながら楽しそうに語る綾瀬さんの言葉に、ズキズキと心が痛む。
――それは深く、心臓にナイフを突き立てられてるみたいだった。
「そ、そだね……たのしそう」
「そのためにも、あたしたちも負けてらんないね!」
満面の笑みでそう言う綾瀬さんに向かって「私の好きな人も佐藤くんだよ」と伝えたら、どんな顔をするんだろう。
きっと綾瀬さんは優しいから、頑張れって言ってくれるんだろうけど……
やっぱり、心の奥では相良さんと佐藤くんに上手くいっ欲しいって思うに決まってる。
「でも、双葉サンが仲良い男子ってあたし分からないなぁ〜。もしかして……中学一緒だった人、とか?」
なんで……バレてるの……?
「え……?」
「あ! やっぱり! じゃあ別の高校なんだねぇ~」
"別の高校"……そっか、佐藤くんが私の事を覚えてなかったことで、バレてなかったんだよね。
あぶなかった……
あながち間違ってはない。
でも、あの中学の中で、佐藤くんの他に好きな人がいるって思われるのは少し心外だ……
でも、こうなったら仕方ない。