お願いだから、好きって言って。

「ちょ、早速ピリつくのやめてよね?!」

 空気が凍りつくような沈黙を綾瀬さんが破ってくれる。

 ……正直ホッとした。


 雪崎くん、可愛い顔して意外とハッキリとした性格なのかな?

 なにごともなく林間学校を過ごせればいいんだけど……


「ってことで、ヨロシクね。双葉さん」


 さっきとは違う優しい笑みで、雪崎くんは言った。

「よ、よろしく……お願いします」


 小さく頭をさげてそう返すと、雪崎くんは満足そうに微笑んだ。



 ◇ ◆ ◇



「双葉サン、雪崎とほんとに話したことないの?」


 昼休み、綾瀬さんはサンドイッチを頬張りながら問いかけた。

 相良さんは部活の昼練でいなくて、篠塚くんと佐藤くんを誘って四人でたべることに。


「え、うん……でも、困ってたから。声かけてくれて嬉しかったよ……?」
「俺ずっと思ってたけど……なんかお似合いじゃね?」
「え! あたしもそれ思ってた!」

 篠塚くんと綾瀬さんは、何故か二人で盛り上がってる。
 お似合いって、言われても……まだ一度しか話したことないのに。


「一吾もそう思わね?」

 篠塚くんの問いかけに、佐藤くんはぶすっとした表情でフルーツサンドを頬張る。


「……べつにぃ?」


 佐藤くん……やっぱり雪崎くんに冷たく返されたの気にしてるのかな?
 そういうので落ち込むタイプなの、なんだか意外だな……



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