お願いだから、好きって言って。

「え、あ、マジなやつ?」
「双葉サン……? 大丈夫?」

 綾瀬さんの心配そうな声で、ハッと我に返る。


「え……う、うん……」


 どうしよう、佐藤くんの顔……見れない。

 ――この気持ち、バレてないよね?



 佐藤くん、どんな顔してるんだろう。


 きっと、私の気持ちになんて興味はないだろうけど……




 どうかこの気持ちが佐藤くんにバレませんように。





「ま、俺にはカンケーないけどね」





 突然、机を叩きながら立ち上がる佐藤くん。



 "カンケーない"……って……


 その鋭い一言が、胸に突き刺さる。



 見上げると、冷たい表情の佐藤くんがこちらを見ていた。


 そんな私から、ふいっと視線を逸らし、佐藤くんは教室から出ていってしまった。




「なによー……アイツ、まだ根に持ってんの?!」




 綾瀬さんの言葉が遠く感じる。


 あんな冷たい目、初めて見た。

 いつも優しくて、ニコニコしててキラキラしてるのに……




 初めてだった、あんなに怖い表情の佐藤くん……


< 58 / 177 >

この作品をシェア

pagetop