お願いだから、好きって言って。


「佐藤くんは……恋愛で困ることなんてないよね……だって、モテモテだもん」
「でも俺、ほんとに好きな人とは結ばれないと思う」


 悲しげに目を伏せる佐藤くん。
 こんなにカッコよくて王子様みたいで……みんなの初恋と言われてる佐藤くんですら、上手くいかない恋なんてあるの……?



「佐藤くんのこと、好きな人はたくさんいる……佐藤くんは気付いてないと思うけど……」


 聞こえるか聞こえないか分からないほど小さい声で、ポツリと呟いてみる。




「わかるよ。全部わかってる。……それで知らないフリしてる。そしたら、知りたくない感情を見なくてすむから」




 佐藤くんは、同じように小さな声で呟いた。


 それって……




 なんて返せばいいのか分からずに言葉につまっていると、佐藤くんはさらに続けて口を開いた。


「でも、双葉さんは自分を隠しすぎてるから、だから何も分からない」





「ほんとに、教えてよ……双葉さんが何を考えてるのか」





 縋るような切ない目で見つめられ、目が離せなくなる。


 そんな目で見られたら……勘違いしそうになる。




 やめて、私……欲張りになりたくないのに。



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