お願いだから、好きって言って。


 気まずい沈黙が流れる中、先生が席を立ち上がる。


「そろそろ着くから準備しとけよー」


 隣に座って佐藤くんと2人きりで話せる時間がもう少しで終わる……



 佐藤くんの恋愛話を聞くのはつらいし、気まずいけど……


 でも、この時間が終わって欲しくない。




「双葉さん、横見て」



 佐藤くんの指さす方を見ると、篠塚くんの肩に寄り添って寝てる綾瀬さんが……


 ちょ……綾瀬さんなんでそんなに大胆なこと……



「なんか楽しみすぎてオールしたらしくて爆睡かましてるっぽいわ」
「なにそれ、綾瀬らしいじゃん」


 綾瀬さんを指さしながら、篠塚くんがそう説明すると、佐藤くんは笑う。
 
 綾瀬さん、寝てないって……体調は大丈夫なのかな?



「つか、お前らイチャイチャすんなよー」
「いや、そういうんじゃないって。綾瀬好きな人いるじゃん」


 佐藤くんの茶化しに対して冷静にツッコミを入れる篠塚くん。


 うん、綾瀬さんの好きな人は篠塚くんだよ。
 誰と勘違いしてるんだろう……


「いや、それは知ってるけどさ……」
「一吾って鈍感なんだよなー」



 佐藤くんが呆れるように零した一言に、ため息をつきながら返す篠塚くん……


「え、もしかして篠塚くん……」
「鈍感って、こっちのセリフじゃね?」


 思わず漏れてしまった言葉に、佐藤くんは囁き声で問いかけた。

 それに小さく頷く。



 
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