お願いだから、好きって言って。
 
 だけどそんな私に、佐藤くんは優しい微笑みを返してくれた。



 そういえば……今気付いたけど。

 全力ダッシュしたせいで、後ろで結んでいた髪の毛はボサボサだし、メガネもズレていた。


 あの佐藤くんと初めて交わす会話が、こんなみっともない格好で……最悪だ。


 まぁ、私のみっともない姿なんて、記憶に残りすらしないんだろうけど。


 ◇ ◆ ◇



 入学式とホームルームが終わり、昼休みが始まった。
 式の間もずっと、佐藤くんはとにかく視線を集めていた。

 同級生だけでなく、保護者や先輩たちまで……ざわめきが体育館を埋めつくしていた。

 そして、佐藤くんが見られているということは、隣を歩くわたしも必然的に見られるわけで……気が気じゃなかった。


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