お願いだから、好きって言って。
冷たい夜風が肌をかすめる。
どちらも言葉を発することなく、しばらく無言の時間が流れる。
言ってしまった。
隠し通すはずだった気持ちは、佐藤くんの冗談を真に受けて、零れてしまった。
「……ごめん」
申し訳なさそうに、ゆっくりとそう言われてしまう。
分かってた……けど、いざ謝られると心が苦しい。
こんな、王子様みたいで、みんなの注目の的みたいな佐藤くんに、私の気持ちを受け入れてもらえるなんて1ミリも思ってなかった。
迂闊だった……
これで、佐藤くんと気まずくなって、もう話せなくなるのかな?
だけど、もう……このいっぱいいっぱいに詰まった、行くあてもなかった気持を隠さなくて済むんだ。
そう考えると、少しだけ心が軽くなったような気がした。