お願いだから、好きって言って。

˚✩* 消えない想いは交差する ˚✩*



 最後まで佐藤くんの顔を見ることはできず、俯いたまま部屋へと走る。



 これ以上泣いているみっともない姿をみられたくない。


 ……これ以上、困らせたくない。


 なんて、走りながら考えていると……




「きゃ……ッ」



 正面からなにかにぶつかり、視界が真っ暗になる。
 慌てて離れると、そこには相良さんがいた。



「え……双葉さん? って、なんで泣いてんの……」




 あ……


 なんて言えばいいんだろう……




「私ッ……ちゃんと、振られてきた……から。だから、安心して……」



 "振られてきた"という事実を口にすると、また涙が溢れ出す。



 そんな私に困惑したように言葉を失う相良さん。


「あの、双葉さん……」



 相良さんが、意を決したように口を開いた瞬間……




「なに、してんの……2人とも」




 綾瀬さんは、廊下の角を曲がってくるなり、心配そうに私たちを交互に見た。


< 94 / 177 >

この作品をシェア

pagetop