神獣の花嫁〜刻まれし罪の印〜
あぐらをかいて、ぽかんと小百合を見上げていた少年が、ひょいと身軽に立ち上がる。
身長は、小百合よりも低いだろう。
もっとも小百合は、同世代の女子よりも大きいほうだが。
そでのない黒い道着は、色こそ違えど柔術に携わる猛者を小百合に連想させる。
上腕二頭筋が、それを証明していた。
小百合は腰を斜めに引き、身構える。
薙刀なら多少の心得はあるが、あいにく側に、棒の類いがなかった。
「いやいや、そうではない!
わしはおぬしに危害を加える気は毛頭ない。早まるな!」
後ずさり、小百合と距離を置いてみせる。
大仰に上げられた両手が滑稽なほど、少年の顔にあせりが見てとれた。
それでも、自分の身に起きた不可解な事象に、小百合は警戒心を解くことなく、年下であろう少年をにらみつける。
「私は、なぜこんな所にいる? ここはどこで、お前は何者なのだ。
何かお前は知っているのか? 私はいったい───」
「待て待て待て! 順に説明する。
頼むから落ち着いてくれんかのう?」
落ち着けとは無理な話だが、説明するとの言葉に、小百合は仕方なくうなずいた。
「……分かった。説明してくれ」
身長は、小百合よりも低いだろう。
もっとも小百合は、同世代の女子よりも大きいほうだが。
そでのない黒い道着は、色こそ違えど柔術に携わる猛者を小百合に連想させる。
上腕二頭筋が、それを証明していた。
小百合は腰を斜めに引き、身構える。
薙刀なら多少の心得はあるが、あいにく側に、棒の類いがなかった。
「いやいや、そうではない!
わしはおぬしに危害を加える気は毛頭ない。早まるな!」
後ずさり、小百合と距離を置いてみせる。
大仰に上げられた両手が滑稽なほど、少年の顔にあせりが見てとれた。
それでも、自分の身に起きた不可解な事象に、小百合は警戒心を解くことなく、年下であろう少年をにらみつける。
「私は、なぜこんな所にいる? ここはどこで、お前は何者なのだ。
何かお前は知っているのか? 私はいったい───」
「待て待て待て! 順に説明する。
頼むから落ち着いてくれんかのう?」
落ち着けとは無理な話だが、説明するとの言葉に、小百合は仕方なくうなずいた。
「……分かった。説明してくれ」