神獣の花嫁〜刻まれし罪の印〜
「はてさて、参ったのう……わしはあまりこういう説明は得意ではな───いが、心して説明する、うむ」

一時しのぎの言葉が聞こえ、小百合がふたたびにらみつけると、あわてたように訂正し少年は話し始めた。

「まず、ここは“陽ノ元(ひのもと)”と呼ばれる世界じゃ。おぬしがいた世界とは、異なる時と空間になる」
「ひのもと? 日ノ本ならば、私のいた国と同じだが」
「ふむ、そうか。では『音』が同じなのかもしれんのう。
わしらとの意思の疎通をはかれるよう、あえて言語を同じくする者を“召喚”してるのやもしれん。
……これは、わしの推測でしかないがの」

明朗で快活な口調。
言葉を発しながら自分の考えをまとめるように話した少年の漆黒の瞳が、小百合を捕らえた。

まっすぐな眼だ。
少なくとも、小百合をだまそうとする者には見えなかった。

だとすれば───不本意ながらもこの事象を受け入れなければ、話は進むまい。
小百合はそう結論づけ、口を開く。

「では、私はなぜ、その“ひのもと”なる世界に居るのだ?
いまのお前の言葉を借りると、私は“召喚”されたということになるな。
お前が私を()んだということか?」
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