神獣の花嫁〜刻まれし罪の印〜
「あっ……お気づきになられましたか?」
鈴を転がすような、可愛らしい声。
あどけない顔立ちの少女が、こちらをのぞきこんでいた。
自分の額から離れていく手を、ぐいとつかみ寄せる。
「ここは……?」
しわがれた声が己のものだと気づくのに遅れるほど、思考速度が落ちている。
少女がおびえた表情を見せるよりも前に、自らの指先のほうが力尽きた。
「っ……こ、コク様と、姫様の、お、お屋敷に、ございますっ……」
「……コク様?」
視線をさ迷わせれば、木目の天井や襖、欄間などが目に入る。典型的な日本家屋の造りだ。
弾力のある寝台に慣れた身からすると、硬く感じる褥の上に寝かされていた。
おもむろに上半身を起こせば、身体の節々が痛い。まるで、病み上がりのような疲労感があった。
「あの、あのっ……わたし、コク様を呼んで参りますねっ……」
年の頃は十二三と思われる少女は、呆然と室内を見回す自分を尻目に、部屋から出て行った。
(私は、いったい……)
記憶が、定かではない。
鈴を転がすような、可愛らしい声。
あどけない顔立ちの少女が、こちらをのぞきこんでいた。
自分の額から離れていく手を、ぐいとつかみ寄せる。
「ここは……?」
しわがれた声が己のものだと気づくのに遅れるほど、思考速度が落ちている。
少女がおびえた表情を見せるよりも前に、自らの指先のほうが力尽きた。
「っ……こ、コク様と、姫様の、お、お屋敷に、ございますっ……」
「……コク様?」
視線をさ迷わせれば、木目の天井や襖、欄間などが目に入る。典型的な日本家屋の造りだ。
弾力のある寝台に慣れた身からすると、硬く感じる褥の上に寝かされていた。
おもむろに上半身を起こせば、身体の節々が痛い。まるで、病み上がりのような疲労感があった。
「あの、あのっ……わたし、コク様を呼んで参りますねっ……」
年の頃は十二三と思われる少女は、呆然と室内を見回す自分を尻目に、部屋から出て行った。
(私は、いったい……)
記憶が、定かではない。